教育のためのコミュニケーション

初めての「教育広報講座」充実した学び&議論の時間に
2022.08.20 コワーキングスペース水戸ワグテイルで開催 Report by 山崎一希




 2022年8月20日(土)、水戸市のコワーキングスペース水戸「ワグテイル」で、本法人として初めての企画である「教育広報講座」を開催しました。「入門編」、「実践編」、「哲学編」というそれぞれ2時間の講座で、参加者のみなさんと刺激的な議論ができましたし、本法人の今後の実践のヒントもたくさんいただきました。参加いただいたみなさん、ありがとうございました!各講座の模様をレポートします。

入門編「広報って何ですか?」

 講座は「入門編」からスタート。こちらは教育機関や団体などで広報の仕事を始めたばかり、あるいは広報に興味が出てきた、という方向けの講座で、高校の先生、子育てや不登校の支援団体、PTAで広報担当となった方などが参加してくださいました。
 コミュニケーションとは情報によって他の人の意識や行動の変化を促すことなので、広報・PRでは目的やターゲットを決めることが大切です。その目的の達成のために、報道機関による取材、有料広告、WEBサイト、SNSといった情報メディアをどのように組み合わせて広報を展開していくのか、講座では具体例も紹介しながらお話ししました。
 参加者のみなさんもそれぞれの団体などでの具体的な場面を想像しながら聞いてくださっていた様子です。「いろんなタイプの保護者がいる中でターゲットはどうやって設定すればいいのか?」「情報や誤解の広がりをどの程度想定しておいて、どんな対応をすればいいのか?」といった具体的な質問をたくさん出していただき、それに答えたり、みなさんと一緒に考えたりしながら、楽しく理解を深めていけました。

実践編「広報プランを作ってみよう」

 「実践編」は、参加者のみなさん自身の活動やテーマに合わせて実際に広報プランの作成に挑戦する、ワーク形式の講座でした。こちらは本当に少人数で、「目的は?」「自分が伝えたいメッセージは?」「アセット(広報に活用できるような強み、インフルエンサーとなるような人の存在)は?」といったワークで手を動かしつつ、それらの内容をリアルタイムでシェアしあいながらじっくりと議論を進めていきました。
 不登校の支援活動を行っているという参加者のおひとりは、自身の家族が不登校経験者だという方以外にはなかなか活動に興味をもってもらえない、という課題意識をお持ちでした。それを「社会の問題」として広く自分ゴト化してもらうためにはどうしたら良いか、ということを考えました。他の参加者も含めた議論の結果、居場所としての選択肢の不足や「普通」に対する脅迫的なまなざしへの不安など、不登校と共通する社会課題を軸に、多様な方々(たとえば独身者や子どものいない方も含めて)とのコミュニケーションを重ねていけるのではないか、といった考えが出てきました。

哲学編「教育・学習と広報の関係を哲学する

 即日で定員いっぱいとなった「哲学編」。こうした議論をじっくりとできる仲間が近くにいるというのは本当に嬉しく、心強いことです。
 哲学編でも、まずは入門編や実践編と同様に広報の考え方や具体的な事例を紹介したあと、教育と広報・コミュニケーションの関係を考える論点として、①能力観へのアプローチによるエンパワーメントの可能性、②教育実践としての学校メディア活用、③言葉の実践による教育観の揺るがし、という3点を示し、あとは自由な議論を展開しました。
 議論が特に盛り上がったのが、メディア実践によって特に学習者の認識を変える(パーセプション・チェンジ)というアプローチが、「洗脳」につながるのではないかという点です。その倫理的な問題をどう考え、実践においてどう留意するか、ということが論点となりました。
 塾の経営者の方などもいらっしゃったので、コミュニケーションコストを下げるようなわかりやすい言葉(「常套句」)や画像(たとえば、子どもが高く手を挙げているような「典型的な」写真)がどうしても必要になる、ということには一定の理解をいただきつつも、やはりそれによるイメージの固定化、偏りのリスクをしっかりと自覚しておくことは、特に教育関係の広報担当者としては重要なことだという認識で一致しました。
 私(山崎)自身も大学の広報の仕事においてそれは重視していて、メディア実践を計画・運営する上でもある種の緩さ、「あそび」の余地を残したり、一見わかりやすい言葉や画像の中にあえてノイズのような拡張情報を紛れ込ませたり、ということをしているつもりです。しかし、それでも第三者からは「洗脳」に見えるような実践があること、あるいはその表面的な方法論だけが別の実践者の手に渡ったときに、「洗脳」化する恐れがあるのではないか、という指摘をいただき、改めて教育の広報の倫理や批評の実践について考え、発信する場が必要だという課題意識の深まりにつながりました。



これからも継続を

 今回は初めての企画ということで、告知もあまり大々的には行いませんでしたが、それでも多くの方に参加いただいたことで、こうした講座の意義を実感できました。特に「哲学編」はすぐに定員いっぱいとなってしまい、参加したくても参加できなかったという方も少なくありませんでした。今後もまた開催できればと思いますので、ぜひお楽しみに!
 参加してくださったみなさん、改めてありがとうございました!

>>トップページへ

お問い合わせ

教育のためのコミュニケーション
info[at]comforedu.org
担当:山崎