教育のためのコミュニケーション

茨城朝鮮初中高級学校 訪問ツアー オープンな雰囲気に驚き!
2022.12.10 多様な教えと学びの現場ツアー Report by 山崎一希




 2022年12月10日(土)、本法人主催の「多様な教えと育ちの場ツアー」の第一弾として、水戸市の茨城朝鮮初中高級学校の訪問ツアーを実施しました。大学生や公立学校教員など10人のみなさんにご参加いただきました。ご参加、ご協力いただいたみなさん、ありがとうございました!

 茨城朝鮮初中高級学校は在日コリアンの子どもたちが学ぶ民族学校です。かつて茨城県内には炭鉱がたくさんあって、日本が朝鮮半島を植民地化していた時代には多くの朝鮮人労働者が徴用されました。在日コリアンの方々は、過酷な労働や民族差別に見舞われながらも仲間同士を「同胞」と呼び支え合い、茨城県内でもコミュニティを育んできました。
 現在は帰化して日本国籍を取得した人、韓国籍の人、それに南北分断前の旧朝鮮籍というアイデンティティを大事に受け継いでいる人など状況はさまざまですが、多くの方が3世、4世という形で日本での生活を送っています。一方、朝鮮学校の在籍者自体は、特に近年における日本国内での公的支援の減少などもあり、減ってきています。

 もし、朝鮮学校が閉鎖的だ、地域との対話に消極的だというイメージを持っている方がいるとしたら、実際に現場を訪れると、そのオープンさにきっと驚くはずです。今回コーディネートをしてくださった社会科担当の金玄徳先生の大らかなパーソナリティも相まって、当日は授業時間中にも関わらず、かなり自由に教室に出入りさせていただけました。こんなことは日本の公立学校では考えられません。加えてこの日は、地元のキッズサッカークラブも人工芝のグラウンドを利用しているなど、地域との交流もさかんに行っている様子がうかがえました。

 初級部(小学生)は1学年2~5人ほど。1年次から授業はほぼ朝鮮語で行われ、日本で生まれ育った子どもたちも、学校生活を通じて早いうちから朝鮮語を身につけます。
 また、ツアーを実施した日は、全国の朝鮮学校が参加する一斉試験の直前ということもあって、特に中級部のみなさんは、自習という形で各自準備に取り組んでいました。この試験のように、朝鮮学校間で交流したり活動を競い合ったりする行事は結構活発に行われているようです。
 高級部になると全国的にも学校数が少なくなり、本州では茨城が最北端。そのため県外からも多くの生徒たちが集まり、寮に住みながら学校生活を送っていますが、小さい頃から学校間で交流しているため、高級部で出会った新たな仲間同士でも最初から強い絆で結ばれているようです。

 今回のツアーでは、授業見学のあと、高級部のみなさんとグループでの懇談を行いました。寮の生活はどんな感じ?ホームシックにならない?卒業したらどうするの?北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)についてはどんなふうに捉えているの?……など、率直にいろんなことを尋ね、じっくり話をすることができました。
 その中でも、参加したみなさんの多くが印象的だったと語ってくれたのが、高級部のみなさんが、自らのアイデンティティや在日コリアンコミュニティのあり方について、しっかりとした意見を持ち、それを力強い言葉で話していたことです。その言葉やスタンスは、アイデンティティや政治について深刻な悩みをもたなくても生活できてしまうマジョリティの日本人の立場からすると、「自分はこのままで良いのだろうか」というような戸惑いを感じさせる強さがあります。同時に、民族としてのアイデンティティと教育のカリキュラム、そして学校生活とが密接につながった環境における、人格に染みわたるような学びの豊かさ、深さに、羨ましささえ感じます。この感覚は、校内に設けられた、茨城朝鮮学校の歴史を紹介するギャラリーをつぶさに見学することでも、さらに強くなります。

 最後は食堂でけんちんそばをたっぷりいただきました。食べ放題のキムチがおいしく、けんちんに入れての「味変」もおいしかったです(おかわりもたくさんいただきました!)。

 今後も地域との交流を広げたいとしきりにおっしゃっていた金先生。今回のツアーをきっかけとした交流事業もさっそく生まれつつあるようで、まさに企画者冥利に尽きます。「いつでも歓迎します!」との言葉を素直に受け取り、また遠慮なくリピートさせていただきます!!

 また、「多様な教えと育ちの現場ツアー」は今後もさまざまな現場の方にご協力いただいて実施予定です。次回もお楽しみに!

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